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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

08 その七 石の下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,242 字 · 65 页

青空文庫

二十年も昔のことで、甚八は津右衛門の命日を忘れていたが、誘われるままに来てみると、すぐ命日かと思いのほか、法要の当月までにはまだ一週間も間があるのだ。

「どうも、変だな。何かあるんじゃないかな」

と、そこは生馬の目をぬく賭け碁の大家甚八、鋭い眼力で、なんとなく怪しい気配を感づいた。

★

地伯が姉の婚家へころがりこんできたのにはワケがあった。父の兆久が死んだのは今から十五年前のことである。安倍家は秩父の豪家であったが、兆久に事業癖があって、鉱山に手をだしたり、陶工をよびカマをつくって大々的に陶器をやかせて失敗したり、山気を起して江戸を往復するたびに先祖伝来の莫大な財宝をすりへらして死んでしまった。

安倍家をついだ長子天鬼は親の山気を慾気の方へうけついで、強慾のケチン坊。弟の地伯に天保銭一枚わけてやるのも惜しいのである。兆久が死んで二十日ばかり経たころ、弟をよんで、

「お前に分家もさせぬうちに父が死んでしまったが、財産をしらべてみると父が使い果して、めぼしいものは何一ツ残っておらぬ。そういう次第でお前に分けてやるような田畑も金もないが、幸い長の山の山林だけが残っている。