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むかしのおもいで

昔の思い出

宮本 百合子

「文章倶楽部」1926(大正15)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,174 字 · 5 页

青空文庫

これは、私が十五か六の時であったと思う。その外に、西洋史を習った時に、ローマ法王と、フランスの王との間に生じた政権上の争いから、ついにフランスの王が雪の中に三日三晩坐って、やっと法王から許されるといったような物語りを書いた戯曲などもでてきて、私を笑わせてしまった。

十二三歳の時分、よく『文章世界』を読んだことを覚えている。その頃の『文章世界』には塚本享生、片岡鉄兵、岡田三郎、塚原健次郎などという人達が始終投書していて、いつでも、特等というのか一等というのか、特に他の人達のより大きく別の欄へ掲載されるので、それで記憶に残っているような気がする。そんなに『文章世界』をよく読んでいたけれども、一人の人の見方や、考え方で、取捨の決まって行く投書というものが、私は嫌いで、遂に一度もしようと思ったことがなかった。

『女子文壇』も私はちょいちょいみたような気がする。『女子文壇』は、母がとっていたのを、いつも私が読むのであった。その頃女流の作家では、田村俊子、水野仙子、素木しづ子、などという人達が盛んに書いていて、そのうちでも素木さんは、どっしりした大きなものを持った人ではなかったけれども、いかにも女らしい繊細な感情と、異常に鋭い神経との、独特の境地を持った作家であることを感じさせられた。