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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

埒に手をかけて揺ぶってやるくらいの事はしても、そしてこの女がぎょっとして後すざりをするくらいなことになっても、薬にはなるとも毒にはなるまい。渡瀬は片眼をかがやかしながら、膳から猪口を取り上げて、無遠慮に奥さんの方にそれをつきだした。奥さんは失礼だという顔もせずに、すぐに銚子を近づけた。

「奥さん、あなたも杯を持ってきませんか。一人で飲んでるんじゃ気がひけますよ」

渡瀬はそう無遠慮に出かけてみた。

「私、飲めないもの」

酌をしながら、美しい眼が下向きに、滴り落ちる酒にそそがれて、上瞼の長い睫毛のやや上反りになったのが、黒い瞳のほほ笑みを隠した。やや荒んだ声で言われた下卑たその言葉と、その時渡瀬の眼に映った奥さんの睫毛の初々しさとの不調和さが、渡瀬を妙に調子づかせた。

「飲めないことがあるものか、始終晩酌の御相伴はやっているくせに」

「じゃそれで一杯いただくわ」

渡瀬はこりゃと思った。埒がゆさゆさと揺ぶられても、この女は逃げを張らないのみか、一と足こっちに近づこうとするらしい。構えるように膝の上に上体を立てなおして、企みもしないのに、肩から、膝の上に上向きに重ねた手の平までの、やや血肥りな腕に美しい線を作って、ほほ笑んだ瞳をそのままこちらに向けて、小首をかしげるようにしたその姿は、自分のいいだした言葉、しようとして