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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

しかもそれは恐ろしい伝染性の血を吐く危険な厄介物でもあるのだ。朋友の間には畏敬をもって迎えられる清逸だけれども、自分の家では掃除一つしようともしない怠け者になってしまうのだ。彼の帰ったのは彼の家にどれだけの不愉快な動揺を与える結果になったか。そのために父の酒はまずくなる。母と弟とはいい争いをする。これまでとにもかくにも澱んだなりで静かだった家の内が、きゅうにいらいらした気分でかき乱されはじめた。清逸はその不愉快な気持を舌の上に乗せているように思った。彼の口は自然に唾を吐いて捨てたいような衝動を感じた。

といって彼は即刻東京に出かけてゆく手段を持ってはいないのだ。神経衰弱の養生のために、家族を挙げて亜米利加に行っている戸田教授でもいたら、相談に乗ってくれるかもしれない。新井田氏でも、三隅のおばさんでも頼んでみたら、考えてくれないこともないかもしれないが、清逸としてはかりにもそんな所に頼むのはいやだった。それにつけて、清逸はその瞬間ふと農学校の一人の先輩の出世談なるものを思いだした。品川弥二郎が農商務大臣をしていたころ、その人は省の門の側に立って大臣の退出を待っていた。