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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

……おぬいは非常に恥かしいところに突きあたったような気がした。そして知らず識らず体じゅうが熱くなった。

そんなことを思っていると、ふとおぬいは心の中に不思議な警戒を感じた。彼女は緋鹿の子の帯揚が胸のところにこぼれているのを見つけだすと、慌てたように帯の間にたくしこんで、胸をかたく合せた。藤紫の半襟が、なるべく隠れるように襟元をつめた。束髪にはリボン一つかけていないのを知って、やや安心しながら、後れ毛のないようにかき上げた。そして袖口をきちんと揃えて、坐りなおすと、はじめて心が落着くのを感じた。おぬいはしんみりと読本に向いて勉強をしはじめた。

ややしばらくしてから、格子戸が力強く引き開けられた。それは渡瀬さんに違いなかった。おぬいは別に慌てることもなく、すなおな気持で立ち上って迎いに出ようとしたが、部屋の出口の柱に、母とおぬいとの襷がかけてあるのを見ると、派手な色合いの自分の襷を素早くはずして袂の中にしまいこんだ。

「いつものとおり胡坐をかきますよ。敲き大工の息子ですから、几帳面に長く坐っていると立てなくなりますよ」

渡瀬さんはそういって、片眼をかがやかしながら、からからと笑って膝を崩した。