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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

そんな気持でしているのではないかもしれないが、そしてそうでない証拠にはすべての挙止がいかにもこだわりのない自然さを持っているのだが、後れ毛一つ下げていないほどそれを清く守っているのを見ると、どこといってつけ入る隙もないように見えた。けれども、それが渡瀬にとってはかえって冒険心をそそる種になった。何、おぬいさんだって女一疋にすぎないんだ。びくびくしているがものはない。崩せるだけ崩してみてやれという気がむらむらと起ってきて、彼はいきなり胡坐をかきながら。

「いつものとおり胡坐をかきますよ。敲き大工の息子ですから、几帳面に長く坐っていると立てなくなりますよ」

といって思いきり彼らしい調子を上げて笑い崩した。おぬいさんはその時立って茶棚の前に行っていたが、肩越しにこちらを振り返って、別に驚きもしないようににこにこしながら「どうぞ」といった。

茶なんぞ飲むよりもおぬいさんと一分でも長く向い合っていたかった。茶はいらないというと、せっかく茶器を取りだしかけていたおぬいさんは素直にそのままそれをそこにおいて、机の座に戻ってきた。ここで彼は新井田の奥さんとおぬいさんとを眼まぐるしく心の中で比較していた。