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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
「どうしてもお前はいやというのか」
おせいはもう涙も出なかった。乾いたままで唇が無性に震えた。
「お父さん、それだけはどうか勘忍してください」
父は地声になって口をとがらした。
「勘忍してくださいといったところが、これはお前のことだからお前の勝手にするがいいのだが、どういう訳だか訳を言わにゃ、ただ許してくれではお父さんも困るじゃないか」
「お父さんは私を……私を高利貸の……妾になさるつもりなんですか」
「とんでもないことを……お前はさっきから高利貸高利貸と言うが、それは働きのない人間どもが他人の成功を猜んでいうことで、泥棒をして金を儲けたわけじゃなし、お前、金を儲けようという上は、泥棒をしない限り、手段に選み好みがあるべきわけがない。金儲けがいやだとなれば、これはまた別で、お父さんのようになるよりしかたのないことだ。安田でも岩崎でも同じこった、妾囲いとてもそうだ。妾を持ってる手合いは世間ざらにある。あの人は同じ妾囲いをしても、隠しだてなどをしないから、世の中でとやかくいうのだが、お父さんは梶はそこはかえって見上げたものだと思ってるくらいだて。それもお前を妾にくれというのじゃなしさ……」