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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

父は母とおぬいとを静かに見やりながらいった。

「お前がたは分らないかもしれないが、男には、一生に一度、自分の力がどれほどあるものだか、それを出しきらなければ死ねないような気持が起るものだ。わしは今までお前がたに牽かれてそれをようしなかった。……もうしかしわしは死ぬものとほぼ相場がきまった。今日はひとつわしの心にどれほど力があるかやってみるのだ。腰から下に通う神経は腐って死んでいると医者もいうが、わしはお前がたに奇蹟を見せてやろう。案じることはない」

父は歩いた。おぬいも自分の肩に思ったより軽い父の重みを感じながら歩いた。歩きながら父はいった。

「おぬい、お前はもう十四になるなあ。強い肩になった。立派にお父さんの力になってくれる。……お前もやがて人の妻になるのだが、なったら、今日の心持を忘れないで良人といっしょに歩くんだぞ。忘れちゃあいけないよ」

父の手がおぬいの肩でかすかに震えはじめた。

父が首尾よく部屋を一周して病床に腰を卸すと親子三人はひとりでに手を取り合っていた。そして泣いていた。

「お前がたは何をそう泣くのだ。わしは喜んで涙を流しているのに。……今日のような嬉しい日はない。