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えいがとみんぞくせい

映画と民族性

伊丹 万作

「映画評論」1944(昭和19)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,175 字 · 11 页

青空文庫

いるのである。

さらに次のような例もある。すなわち我々は過去において外国の探偵小説を読み、それらの作家の名前までおぼえてしまつた。しかし、それらとは比較にもならないほど高い作家である鴎外の名を知つている外国人が果して何人あるだろう。ここにもまた国際性が決して価値に比例しない実例を見る。

優れた作品を作りさえすれば、それらは易々と国外に進出するという楽観論は、芸術に国際性のみを認めて民族性のあることを見落したずさんな議論であつてまだ思考が浅いのである。

いま、日本の政治は何より映画の国際性を利用しようと焦つているのであるが、ここで特に為政者に深く考えてもらいたいことは芸術においては国際性というものはむしろ第二義の問題だということである。しからば芸術における第一義の問題は何か。他なし。芸術の第一義は実に民族性ということである。

諸君はハマモノという言葉を知つているであろう。いい換えれば横浜芸術である。民族に根ざし、民族に生れた芸術が、自己の民族に対する奉仕を忘れて国際性を第一義とし、輸出を目的とした場合、それはたちまちハマモノに転落し国籍不明の混血児ができあがるのである。