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きのう・きょう・あす
昨日・今日・明日
織田 作之助
「キング 三月号」1946(昭和21)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,018 字 · 24 页
じゃ、自分たちは大阪までだから、京都まで話が出来ると思うと、白崎は何かほのぼのとたのしかったが、ふと、赤井が二人の話ののけ者になっているのに気がついたので、
「ところで、あの時、あなたのあとで、落語をやった男がいるでしょう? ――この赤井君です」
と、紹介した。
「どうぞ、御ひいきに――」
ペコンと、ひょうきんな恰好で頭を下げたが、しかし、どこか赤井の顔は寂しそうだった。これから大阪へ帰っても、果して妻や子は無事に迎えてくれるだろうかと、消息の絶えている妻子のことを案じているせいかも知れなかった。
そう思うと、白崎の眉はふと曇ったが、やがてまた彼女と語っている内に、何か晴々とした表情になって来た。
だから、京都までの時間は直ぐ経ってしまった。
山科トンネルを過ぎると、京都であった。そのトンネルの長さも、白崎にはあっという間に過ぎてしまう短かさであった。
汽車の中は、依然として混雑を極めていた。彼女はやはり窓から降りなければならなかった。
「大丈夫ですか。降りる方がむつかしいですよ」
「でも、やってみます。荷物お願いします」
彼女は窓の上に手を掛けて、機械体操の要領で足をそろえて窓の外へ出そうとした。