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ひるのはなび
昼の花火
山川 方夫
「三田文学 第四七三巻第一号」三田文学会、1953(昭和28)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,030 字 · 15 页
いま歩いてきた外苑の鋪道に、紙屑がべったりと貼りついたまま乾いて、枯れた花の色をしていたのを、彼は思い出した。
道の両側につづく木々は、皆、染まるような青葉だった。それが、次つぎとよく繁った枝を繋げていて、いくつもの幹をもつ緑の暗い雲のように、若い芝に影を落していた。その外苑の木立がいま、外野席の向うに、濃緑の帯のように見える。
「ねえ。練習に手をたたいちゃ、へん?」
女は、野球を知らないのだ。
大きく、彼は空気を吸った。日に焙られて、頬が熱い。
「ううん。たたいたって、いいの」
だが、女は拍手を止めた。
汗ばんだ掌の音が急に止んだのに、ふっとひっかかって、彼は、
「手、たたいたって、いいんだよ」
そううながすようにいった。そのとき、女は、なにも見ない目をしていた。
「……きっと、まっ黒けになっちゃう」
やがて、女は独りごとのようにいうと、敏捷な手つきで、白い手巾を前髪の上にひろげた。その日、女は濃紺の細いタフタで、髪を束ねていた。
十九歳の彼に逢うとき、四つ年上の彼女は、いつも若く粧っている。態度にも、その努力が出ていた。ようやく此頃、彼はそれに無関心になった。