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ひるのはなび

昼の花火

山川 方夫

「三田文学 第四七三巻第一号」三田文学会、1953(昭和28)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,030 字 · 15 页

青空文庫

野球場の暗い階段を上りきると、別世界のような明るい大きなグラウンドが、目の前にひらけた。

氾濫する白いシャツの群が、目に痛い。すでに観客は、内野スタンドの八分を埋めてしまっている。

グラウンドには、真新らしいユニホームの大学の選手たちが、快音を谺するシート・ノックの白球を追って、きびきびと走り廻っている。日焼けした顔に、真上からの初夏の光が当って、青年たちは、野獣のように健康な感じだ。捕球する革具の、鈍い響き。固く鋭いバットの音。掛声。それが若々しい声援や拍手に入り乱れて、通路を歩きながら、彼も軽い昂奮に引き入れられた。

「うん。上手い」

「チェッ、まずいな」

そんなことを、席をさがしながら、無意識に口にしていた。

並んで坐ると、すぐに女は訊いた。

「これ、まだ練習なの?」

「うん。まだ練習なの」

場内の昂奮に感染したみたいに、女が拍手をする。弾ぜるような音だ。それが続く。

肉の豊かな、やわらかな女の掌を感じさせて、瞳の隅で、その白い灯がちらちらする。避けるように、彼はグラウンドをみつめた。

フィールドの土は、湿っていて、その焦茶いろが新鮮だった。

昨夜の小雨のせいだろうか。