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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
して囁いた。
「女を隠れ家に送り込んだ、三五八八の自動車が帰って来ましたので……」
「えっ。三五八八」
「そうです。数寄屋橋タクシーです」
「……それじゃ……先刻のがそうだったんだ」
「発見していられたんですか最早……」
「うん。そうでもないが……相手は大勢かね」
「はい。運転手の話によると女の外に、凄い顔付をした支那人や朝鮮人を合わせて四五名居ると云うのです」
「新聞記者が一人も居ないのはどうしたんだ」
「貴方が日比谷公園で迎えの自動車を待ってられると聞いて皆飛んで行ったんです」
「事件の内容は知るまいな」
と云いも了らぬうちに山勘横町の角から一台の速力の早いらしい幌自動車が出て来て私達の前でグーッと止まった。先刻の軍艦色のパッカードである。続いて来た一台の箱自動車は志免刑事の相図を受けて警視庁の入口の方に行った。
私達は猶予なく自動車に飛び乗った。あとから追っかけて来た三人の刑事も転がり込んだ。
志免警部は運転手に命じた。
「お前が今行った家へ……一ぱいに出して……構わないから……」
運転手はハンドルの上に乗りかかるようにうなずいたと思うと、忽ち猛然と走り出して電車線路を宙に躍り越えた。