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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
私はずっと前からこの種の第六感の存在を固く信じているもので、これによって重大な事件を解決した例は一つや二つでない。勿論科学的な研究や観察を基礎とした推理なぞを決して軽く見ている訳ではないが、場合によってはそんなものが全く役に立たなくなって、いくら研究して、推理して見ても、考えは唯同じ処をぐるぐる廻るばかりのみじめな状態に陥る事がある。
大抵の人間はそんな時にすっかり失望して終って、とても駄目だと諦めて終うようであるが、私は決してそれを諦めない。なおの事一心不乱になって考え続けて行く。そうすると全身の神経の作用が次第に求心的に凝り集まって、あるかないかわからない無色透明の結晶体みたようになってしまう。その時に第六感が煌々と、サーチライトを見るように輝き出して、事件の焦点を照し出したり、行くべき方向を示したりするから、それに依って猶予なく敏速な活動を開始する事が出来る。但し、そんな場合に何故そんな風に私が動き出して行くのかという理由は、説明しようとしても説明出来ないのだから、私は難事件になればなる程たった一人で仕事をする事になる訳である。しかもそんな場合に傍から見ていると、私の行動はまるで狂人のように感じられるそうであるが、その結果を見ると又、奇蹟としか思わない事が多いそうである。