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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
これは普通人ばかりでなく私と同じ仕事をしている連中でもそう感じるそうで、現にこの間私を免職した高星総監なぞも、
「君はまるで魔法使いのようだ。事件と何の関係もない事実を見付けては寄せ集めて、その中に事件の核心を発見する」
と云って舌を捲いた位である。しかし事実は不思議でも何でもない。普通人が常識の範囲内でだけしか仕事が出来ないのを私は「第六感」の範囲まで神経を高潮させて仕事をするからで、現在たった今私がカフェー・ユートピアを飛び出すと一直線に「新宿へ」と命じたのもその最適当した一例であろうと思う。
この時の私はただ「第六感」ばかりに支配されていた私であった。
初めカフェー・ユートピアでボーイが私に紫の包みを渡すべく差出した時に、私は殆んど睡りから覚めかけていた。そうして、いつの間にか不思議にがら空きになっているカフェーの片隅に、たった一人で静かに眼を閉じていると、疲れが休まった身体の中にずんずん血がめぐって行く快よさと、頭の中の神経細胞がちゃんと秩序を回復していて気を付けの号令をかけられた軍隊のように整然としている気持ちよさとを、心ゆくまで感じていた。