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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
催眠術なぞいうものもありますが、あれは一種の神経作用を応用したもので、まだ根本的の説明が附いておりませぬ。この後、精神生理学というようなものでも発達したら、そんな理窟がわかるかも知れませぬが。とにかく僕の実験室には、そんな研究の材料も機械も何もありませんよ。……精神的に人を毒殺する……というような素晴らしい設備は……」
「はい。なくてもよろしゅうございます。私は今に自分で材料を揃えてやって見とうございます。そうしてその結果を貴方にお眼にかけとうございます」
少年はこう云いながら極り悪げにうつむいたが、この口調の中には動かす事の出来ない信念が籠もっていた。天国でも、星の世界でも眼の前に引き寄せようとする、希望と憧憬に充ち満ちた少年らしい純情が響きあらわれていた。私はこの少年がどんな材料を集めて、どんな機械で、そうした不可能な実験をするかと思うと、微笑を禁ずる事が出来なかった。
しかし、それと同時に私は、この少年が、その姿や服装が異様に優れているのと同時に、その頭脳もまた尋常でない。少なくとも私の処に雇われたいために、想像も及ばぬ勉強をして来た物理、化学の研究が、正式の順序を踏んで来たものらしい事は否定出来なくなったのではたと当惑してしまった。