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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
その代り知っている事は何でもしっかりと返事しなければ駄目だぞ」
「ハイ……」
とボーイはすすり上げながら頭を低れた。私は一層、言葉を柔らげた。
「岩形さんが帰って来たのは昨夜の何時頃だったかね」
「……十二時半近くでした。それまで僕は……私は他のお客の相手をして玉を突いてました。そうしたら、仲間の江木がやって来て、お前の旦那は一時間ばかり前に帰って来ているんだぞ。知らないのかと申しましたから、私はすぐにキューを江木に渡して二階に駈け上りました。けれどもその時は……」
「扉に錠が掛かっていたろう」
「そうです。それですぐに……自分の室に帰って寝てしまったんです」
と云いながらボーイは深いふるえた溜息をした。私はそこで一つ意味ありげに首肯いて見せた。
「あの岩形さんは、いつもそんな風にして寝てしまうのかね」
「いいえ。岩形さんはいつでもお帰りになるとすぐに私をお呼びになりますから、私はお手伝いをして、寝巻を着かえさせて、ベッドに寝かして上げるのです。どんなに酔っておいでになりましても、私に黙ってお寝みになった事は一度もありません。……貴様が女なら直ぐに女房にしてやるがなあ……なんて仰言った事もあります」