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きょくばだんの「トッテンカン」
曲馬団の「トッテンカン」
下村 千秋
「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年9~11月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,620 字 · 34 页
九
新吉はただもう、無我夢中で働いていました。
九
十日ほどでそこを打ち上げた曲馬団は、今度は東京の南の端の町へうつり、そこでまた十日ほど打ちました。それから横浜へ行きました。次に小田原へ行きました。次に静岡、次に浜松、それからさらに大阪、神戸、京都、金沢、長野とまわって、最後に甲府市へ来たときは、秋も過ぎ、冬も越し、春も通りぬけて、ふたたび夏が来ていました。
新吉の曲馬団の生活も、もう一年になったのでした。そしてその間に、新吉はりっぱな象使いの名人になっていました。次から次へうつって行くときの長い旅を、新吉はいつも象といっしょに貨車に乗せられたのです。はじめから仲よしだった新吉と象はこのような長い旅のあいだに、もう兄弟のようになってしまい、象のファットマンは、新吉のいうことなら何でもわかり、新吉の命ずることなら何でもするようになったのでした。
団長もこれにはびっくりもし、よろこびもしました。そこで新吉を、象使いの名人として見物人の前へ出すことにしたのです。
これまでの象使いは例の一寸法師でしたが、一寸法師には、片足を上げさせたり、ラッパを吹かせたり、碁盤の上へ乗せたりするぐらいしか出来ませんでした。