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しょきかん

書記官

川上 眉山

「太陽」1895(明治28)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,182 字 · 36 页

青空文庫

たのはあなたの因果というもの、御迷惑でもありましょうが、まあ一しょに付き合って下さいな。そのかわりには私はまた、あなたのどんな無理でも聞きましょう。と親しげにいう。

否みかねて光代はついに従いぬ。時は朝なり。空は底を返したるごとく澄み渡りて、峰の白雲も行くにところなく、尾上に残る高嶺の雪はわけて鮮やかに、堆藍前にあり、凝黛後にあり、打ち靡きたる尾花野菊女郎花の間を行けば、石はようやく繁く松はいよいよ風情よく、耀たる湖の影はたちまち目を迎えぬ。

どこまでもその歓心を買わんとて、辰弥は好んであどけなき方に身を置きぬ。たわいもなき浮世咄より、面白き流行のことに移り、芝居に飛び音楽に行きて、ある限りさまざまに心を尽しぬ。光代はただ受答えの返事ばかり、進んで口を開かんともせず。

妙なことを白状しましょうか。と辰弥は微笑みて、私はあなたの琴を、この間の那須野のほかに、まあ幾度聞いたとお思いなさる。という。またそのようなことを、と光代は逃ぐるがごとく前へ出でしが、あれまあちょいと御覧なさいまし。いい景色のところへ来たではありませぬか。あの島の様子が何とも言われませんね。