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しょきかん

書記官

川上 眉山

「太陽」1895(明治28)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,182 字 · 36 页

青空文庫

どの道悪い首尾にはならぬ。とさながら前に人もなげなり。

何事か起りたるとは知らぬにあらねど、光代は差し当りての身の物憂げなるを、慰めてくれぬ父を恨めしと思いぬ。憂いに重ぬる不満は穂にあらわれて、父様、つまりませぬから私も帰りまする。と辛きに当てて不興らしく言う。善平はさらに耳にも入れず、何にしてもかの炭山が手に入れば、例の失策の株以来、手ひどく受けた痛みもすッかり療治が出来る。その上日清事件の影響から、海産物に及ぼした損失もこれで埋合せがつくというもの。いや首尾よくやって見たいものだ。とわれを忘れて調子づく。

父様、父様ッたらば父様、私は帰りますよ。と光代は声を励ましていとどけわしく言う。善平は初めて心づきたるごとく、なに帰る? 私も帰るさ。一時も早く東京へ帰って、何彼の手はずを極めねばならぬ。光代、明日ははやく発とうぞ。それにしても炭山は、ぜひとも手に入れたいものだ。と半ばは先に心を奪わる。

明日の朝すぐの発足と、たやすく言われたる光代は案外なる思い、少しはいじめて困らせて、渋々我意に従わせて、そして一しょに帰らんとの、所思の張合いを抜かされたるが、乙女心の気に入らず、初めよりして構いつけられぬが、なお気に入らず進み寄りて、父様、それは真実なの、え、父様、あれさア、身に染みて聞いて下さいよう。