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しょきかん

書記官

川上 眉山

「太陽」1895(明治28)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,182 字 · 36 页

青空文庫

事は思いしままに滞りなく行きぬ。一つ、薄儀、金二万五千円なり。辰弥はその夜例のごとく新橋泊り。

七

綱雄のようやく帰り来たれる報知は、人伝てによりて三好の家に達しぬ。されどもこなたへはたやすく顔も出さざるを、世間気質の善平は大いに面白からず思いぬ。第一不断からおれを軽蔑して、と伯父甥の間は次第にむずかしくならんとす。光代の母はもとからの学者嫌い、かかる折に口をつぐみてはいず。全体日ごろから情のない綱雄のこと、このくらいの仕打ちは何でもありませぬ。先だっての火事見舞いにも来てはくれず、この間の産の祝いも、忘れた時分にようやくよこすような仕儀と、世情に疎き綱雄の非は、それからそれと限りもなく数えられぬ。

堪えかねて光代はひそかに綱雄のもとを音訪れぬ。綱雄は家にあらざりき。光代は時の許す限り待ちに待ちぬ。綱雄はついに帰らざりき。泣くばかりなる身を起して、しおしおとようやくわが家に着けば、綱雄はその留守に来たりしとなり。ああ何という縁のないことやら。と光代は心の中に泣きぬ。

奥に善平は烈火のごとく打ち腹立っていたり。娘を見るより声を励まして、光代、綱雄との縁は破談にしたぞ。