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そがのあばれんぼう

曽我の暴れん坊

坂口 安吾

「キング 第三〇巻第六号」1954(昭和29)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,123 字 · 19 页

青空文庫

「ほんと! 二人だけになれるのね」

「そうだとも」

「うれしい。カンベンしてあげるわ」

という次第で、十郎は虎をつれて曾我の閑居へ戻った。

置き残された五郎、待遇がすごく好いから大喜び。食っては立廻りの稽古をし、食っては立廻りの稽古。食うのと、立ち廻りと、寝ることのほかには何も考えない。

例の道案内の白拍子念々は腹をたてて、

「ねえ、アンタ。ここをどこだと思うんだい。特飲だよ。遊ぶ女がいるんだよ。料理ばかり食ってないで、たまには女にも手をつけなよ」

「女は、うまいか」

「それは、うまいよ」

「サシミにするのか。塩焼きにするのか」

「チェッ。バカだよ、このデブチンは。ほんとに女を食うつもりらしいね」

念々もサジを投げざるを得ない。

五郎は大磯ですっかり顔になってしまった。大磯ばかりではなく、五里も十里もはなれた宿の遊び場からも、面倒が起ると、五郎のところへとんできて、

「ねえ、五郎さん。たのみますよ。また悪侍の一味の奴が上りこんで」

「オレは事情があって一命が」

「よしてくれよ。こッちは真剣なんだから」

「イノシシを食わせるか」

「ああ、いいとも。二匹でも三匹でもゴチソーするよ。