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さいしょのいんしょう
最初の印象
大倉 燁子
「別冊宝石 七巻九号」1954(昭和29)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,472 字 · 3 页
これはたった一人の先生のお弟子だと自称していたある青年が、私の心をはげましてくれた言葉でした。
そういういろいろなことを、頭に浮べながら、軽卒にお訪ねしたことを、半分後悔しながら、ぼんやりとお庭を眺めていました。
ところが、お座敷に姿をお見せ下さった先生は、ゴシップや想像を裏切って、気軽な明るい、いかにも社交的な朗らかな方なのにまずびっくりしてしまいました。
いい加減の噂はするものではない、また噂を信ずるものではない、と、つくづく思ったことでした。お目にかかった瞬間に私の不安は一っぺんに吹き飛んでしまいました。あの青年の云った言葉がほんとだったのです。
そのことを後で青年に話しましたら、青年得意になって、
「先生にはいろんな面があるから一口にこういう方だと、云いきることは出来ませんよ。僕は一度浅草にお伴をした時、公園の砂利の上に座って乞食の真似をされた。その時なんざあ絶対に明るい社交的な方とは見えませんでしたからね」
その後、いく度もお目にかかってから、この青年のあとの話は、嘘だったなと思いました。何んでも優れた方は常人でなく、変った方にして、置きたいものなのでしょう。