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きにのぼったこども

木に上った子供

小川 未明

「少年倶楽部」1927(昭和2)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,835 字 · 8 页

青空文庫

」と叫びました。そして、彼は、夜の風に吹かれて、いつまでも外に立っていることがありました。

「辰吉や、風をひくといけないから、家へお入り。」と、おばあさんは、家のうちから呼びました。

すると、辰吉は家へはいりながら、

「僕、お母さんの星を見ていたのだもの。」といいました。このとき、おばあさんは、しわの寄った大きな手で、辰吉の頭を黙ってなでなされたのであります。

辰吉が、やっと十二になったときでありました。

おばあさんから別れて、五、六里も隔たった、ある村へ奉公にいかなければならなくなりました。

はじめて、知らぬ家へきた辰吉は、さびしくて、朝、晩、人のいないときには、「おばあさんは、いまごろどうしていなさるだろう。」と、思い出して、目にいっぱい涙をためていました。

この家の主人は、どちらかいえば、厳格すぎる人でした。「うんと働かなくちゃ、いい人間になれない。」といって、辰吉に、いろいろなことをいいつけました。

辰吉は、使いにやらせられたり、水をくませられたり、いろいろなてつだいをして休む暇もなかったのです。こんなとき、どんなに、やさしかったおばあさんのことを思い出して、なつかしく思ったでありましょう。