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「みぼうじんのしゅき」せんごひょう
「未亡人の手記」選後評
宮本 百合子
「婦人公論」1950(昭和25)年1~4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,472 字 · 7 页
二
生活の日々が、夫に死なれた妻の悲しみや愛慕の感情もいつとはなしにおし流して四年、七年と経った今日、気がついて眺める自分の心の中では、かつての愛や悲しみも、歩いて来た道のうしろに遠のいて、みちしるべのように立っていることに驚く。十四篇の原稿のなかには、いくつかそのような心の推移が語られていた。「告白」はそのようないきさつでの立場が、自然にその人の人生にくみとられて語られている。前回の分とあわせて三十篇近い記録のなかで、戦争に対する抗議が社会の問題としてのひろがりをもって表現されているのは、「愛と戦いと」の結末であった。「茨の道を踏み切って」生きる方法をくみたてた人の闘いの姿はおそろしいばかりである。上級軍人の妻であったということからうけた特別な苦痛を、筆者は、はげしい実行力で生きぬいた。野蛮だった日本の軍隊組織、がむしゃらだった戦争。満州で土地の人民の生活をこわしたその力のはねかえりで、自身の家庭さえうちくだいてしまった軍国主義精神。「四千の兵隊を指揮した連隊長」という立場は、四千人の人々の生死とその家族の運命に絶対的な破壊への命令を与えた立場でもあった。