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みぼうじん
未亡人
豊島 与志雄
「諷刺文学」1947(昭和22)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,474 字 · 21 页
あなたはその晩、自宅の風呂にのんびりと入浴しました。そして、信昭君のところへ友人が来て、ウイスキーを出すついでに、あなたの方も高木君を相手にウイスキーを飲んで……そしてこんどは、ほんとに汗ばみましたね。私はいささか呆れましたよ。
守山未亡人千賀子さん
あなたは丹前をひっかけて炬燵にあたりながら、ピーナツをかじりウイスキーをなめました。そして湯上りの薄化粧の頬を少しく上気さして、高木君をじっと見つめましたね。
「高木さん、わたしのために、これから、ほんとに勉強して下さいませんか。」
高木君はびっくりして、返事につまったようでした。誰だって、だしぬけにそんなことを言われたら戸惑うでしょうよ。
「ほんとに勉強して下さるわね。」
あなたは畳みかけてそう言って、やさしい眼付を見据えたままでした。その眼付に縋りつくようにして、高木君は漸く言いました。
「なんでも奥さんの仰言る通りにしますよ。」
「それが、特別の勉強なのよ。」
あなたはにっこり笑って、それから暫く持って廻った後に、こんど代議士の選挙に立候補しなければならなくなるかも知れないと、打ち明けましたね。然し、それと高木君の勉強と何の関係があるかは、なかなか説明しませんでしたし、それは遂に通り越されてしまいました。