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みぼうじん
未亡人
豊島 与志雄
「諷刺文学」1947(昭和22)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,474 字 · 21 页
それから庭には、椎の古木があって、その梢近くの空洞には、雀が巣をつくり、雌雄仲よく嘴をつっつきあっては愛を語っていますから、自然とその方へ眼も向くでしょうよ。それらの雀を眺めて、あなたはうっとりと微笑み、高木君は溜息をつきましたね。
あなたは十五年も年上の良人に長年仕えてきて、そして今では未亡人で、もう更年期にも近づいてるのに、独りで置くには惜しいと噂されるほどの容姿です。高木君は顔立もみなりも整ってるおとなしい人柄で、あなたより十年あまり若い独身者です。だから、あなたが高木君を弟のようにまたは子供のように可愛がろうと、一向に不思議ではなく、高木君があなたを姉のようにまたは母親のように慕おうと、一向に不思議ではなく、それはまあちょっとしたロマンチックな感情で、熱烈な恋愛にまで高まるものではありますまい。
ところで、あの晩、金庫には紙幣がつみ重なり、あなたは厚生参与官の遠景のもとに婦人代議士となり、自宅の風呂にはいり、ウイスキーに酔って……そして事情がだいぶ変ってきました。高木君はあなたの立候補が不満で、ついで不安になり、なにか遠く後方へ放り出されたような心地で、見えはしませんでしたが、涙を眼の奥ににじませていました。