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すえっこ
末っ子
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页
それに家付きの妻女と、妻女の老母がいるので、狭い家の中はいつも鶏小舎のように賑やかだった。
平五は叔父の居間で話したが、その部屋は三帖で、板塀に鼻の閊えそうな庭があり、痩せた青木が萎れた葉を垂れているという、いかにも暑くるしくうらぶれたけしきであった。話は簡単に済み、平五は四半刻そこそこで帰ったが、その僅かな時間にも、子供たちが居間へ出入りしたり、喧嘩をする走りまわるで、まったくおちつく暇がなかった。
主殿は平五を送りだしながら、例によってねだり顔をみせた。いつもひどい貧乏なので、この甥を見ると(必要のないときでも)なにかねだりたいような気分になるらしい。夕方に訪ねたときはたいてい食事にさそうのだが、まだひるまのことだから、平五は気づかないふりをし別れを告げた。
「刀とくればお手のものだ」と平五は歩きながら呟いた。
「ここでいちばん叔父の面目を立ててやろう、おやじは刀のことはわからないし、集まる連中はめくらばかりなんだから、いまに眼を剥かせてやるからみていろ」
彼は越中堀の清鑑堂へまわった。
横丁へ曲って、その前まで来ると、店の中にあの娘がいた。細江みのという娘である。