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すえっこ

末っ子

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页

青空文庫

きょうだいじゅうではいちばん利巧でしょう、親に口返しをしたためしもなし、はいはいとよく云うことをきくんです、けれどそれはおもてだけで、はらの中はどうも人を小ばかにしているように思えてなりません、学問は聖坂へかよいましたし、武芸は道場が近いので柳生さまでした、聖坂へはいまでも、ときどき日講を聞きにゆくようですが、どちらも成績はよかったようで、ことによるとそんなことで慢心しているのかもしれません、お父さまや敬さんと気が合わないので、あいだに立つあたしは困るようなことがたびたびです、養子縁組のはなしも二度か三度ありましたが、敬さんが承知しないんですよ、いまのままで養子などにやったら小出の恥になるっていうんですの、それに本人もゆく気はないようです、もう二十四にもなるのにどうするつもりなのか、やっぱり末っ子なので、まだあまえた気持がぬけないのか、あたしにはわけがわかりません、本当にあれは気ごころの知れない子です」

長兄の妻はる女は云う。

「平五さんですか、さあ、わたくしよく存じあげませんのよ、主人の云うほどではないでしょうけれど、みなさん少し厳しすぎるのではないかと思いますけれど、でもわたくしにはよくわかりませんですわ、ええ、本当のところわたくしよく存じあげませんですのよ」