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すえっこ
末っ子
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页
父は居間で書きものをしていた。平五が坐るとこっちへ向き直ったが、その顔を見ただけで、ひどく怒っていることがわかった。
「短刀をどうした」と玄蕃はいきなりどなった。
平五はまごつき、「なんですか」とそらを使おうとした。
「ごまかしてもだめだ、正宗の短刀を持っているだろう、ここへ持って来い」
「どうして、いや、どうなさるんですか」
「きさまなどの持つ品ではない、おれが預かるから持って来いというのだ」
平五は口ごもって、云った、「それはちょっと困ります、あれは新庄の叔父さんのものですし、それに」
「黙れ」と玄蕃はどなった、「きさまのしたことはすっかりわかっている。主殿がなにもかも話していったぞ、この、このしれ者、きさま呆れ返ったしれ者だぞ、いいからまず短刀を持って来い」
平五は黙っていた。
「きさまが持っていることに紛れはない」と玄蕃はなお云った、「おれは研ぎの結果が知りたいから平河町へいった、すると新庄へ返したというので主殿を呼んだのだ。主殿はすっかり話をして、持ち帰ったのはきさまだろうと云った、それに相違ないだろう」
平五は怒りのために胸が熱くなった。
――なんというなさけない人だ。