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ほんいんぼうしゅうさい

本因坊秀哉

野上 彰

「囲碁世界」1950(昭和25)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,685 字 · 6 页

青空文庫

瀬越門下の呉清源同門の人たちは、橋本宇太郎、井上一郎たちが先生の瀬越憲作を中心にして、呉清源の勝を読んで研究していたが、あの運命の妙手をやはり同じころにみつけ出して、「我やんぬるかな」と嘆いたとか……事の真相はいずれであるか、ぼくは知らない……ただ、亡くなられた吉田操子先生に直接に、ぼくが伺つた話では、べつにそのようなうわさを否定されてはいなかつたようだ。ちょうど、吉田先生は所用で上京されていて、たまたまあの日の前日本因坊さんのお宅に行き、祝盃をあげて、上機嫌の秀哉名人に逢われたといふ。秀哉名人の機嫌のよさなどは、ぼくはいちども見たことがないから想像も出来ないけれど、呉清源との一局が、当時やかましかつた新布石法と旧布石法との対立であつただけに、本因坊名人も、生死を賭けての対局であつただろう。現実の生命を賭けるというのでは、もちろんなく、明治大正と受けついで来た古来の定説を守る最後の人として、棋士として、また碁界最高の権威として本因坊名人には敗けられぬ一戦であつた。それだけに盃をあげる名人のうれしさは、吉田操子先生から伝え聞くぼくにも分つた。その後、木谷実との箱根での最後の対局に敗れた名人晩年の姿は、わが師川端康成の小説「名人」