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ほんしゅうおうだん つうかいとほりょこう
本州横断 痛快徒歩旅行
井沢 衣水
「冐險世界 第四卷第拾參號」博文館、1911(明治44)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,069 字 · 29 页
五人は湖畔を辿って菖蒲ヶ浜へ出た。ここは昼なお暗き古木が深々として茂っている。この中に山林局の養魚場がある。白亜の洋館に行き養魚の有様を見んと訪えば、ここに偶然にも、僕の旧知、法科大学生福田甚二郎君がいて、種々養魚上の説明をしてくれ、ここの所長をしている谷口利三郎氏も出て来られて、雨中に学術上の説明をしてくれた。
ここを出て地獄茶屋でひと休み息んでいると、只事ならぬ叫び声が聞える。スワ何事の出来と、四人一度に飛び出す。見れば一頭の悍馬谷川へ陥ちて今や押し流されんず有様。何でこの状を目睹して躊躇すべき。将軍、忽ち着のみ着のまま川の中へ飛び込んで口元を確かと握り、金剛力を振い起こし、「エーヤッ」とばかりに引揚げた。呆気に取られて見ていた馬子さん、涙を流さんばかりに、
「どうもありがとうござんした。お陰様で……」
と平身低頭礼を言っている。馬殿、鼻をブルンブルンいわせながら、一声風に嘶いてヒーン。
将軍濡鼠のごとくなって陸に上がり、茶屋でボロ洋服を乾かす。
竜頭の滝を見て、戦場ヶ原の入口に入りし時は、雨ようやく晴れて、額が痛くなるほど黒髪山が頭上にのぞいている。