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ほんしゅうおうだん つうかいとほりょこう
本州横断 痛快徒歩旅行
井沢 衣水
「冐險世界 第四卷第拾參號」博文館、1911(明治44)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,069 字 · 29 页
一行いずれも意外の景色に驚く。
「栗生峠はなかなか難所だが馬で越すことが出来るそうだ。どうだ、一つ峠の凸凹道を馬上で越そうではないか」といい出したのは未醒画伯。随分乱暴な話だ。歩るいてさえ冷々する峠路を馬背によりて行くとは、少し猛烈過ぎるけれども、吾々はそんな事にひるむ人間ではない。冒険は元々覚悟の上だ。「よかろう。それも面白いだろう」と忽ち一決。田舎の荒くれ馬を四頭雇い入れて、いよいよ馬上、栗生峠を越すことになった。
髯将軍は馬術の名人なり。少し位の悍馬でも峠位は差支えなかろうが、後の三人と来ては、生まれて以来、しみじみ馬背の厄介になった事すらない人間だ。物好き連とはいいながら、多少剣呑である。平地を行く時は大得意、馬上ゆたかに四囲の山々を眺め回わし、微吟に興をやって、ボコタリボコタリ進む。
麓の村で馬に水飼い、さあこれからいよいよ栗生峠である。最初登りはダラダラであるから孰れも平気の平佐。愉快愉快とばかりに馬上打興じて、左手に赤城、榛名の山を眺め、あれが赤城の地蔵岳だの、やれあれが伊香保の何々山だのと語りながら馬を進ませたが、次第に路が嶮岨になって、馬が躓ずいたり止まったりすると、なかなか話どころではない。