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ほんしゅうおうだん つうかいとほりょこう

本州横断 痛快徒歩旅行

井沢 衣水

「冐險世界 第四卷第拾參號」博文館、1911(明治44)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,069 字 · 29 页

青空文庫

そのうちに身体は左右ヘゴロチャラゴロチャラ揺れる。細い路の片側は恐ろしい谷である。馬上孰れも汗ダクダク。

その内ドサリと音がして「ヤッ」という声がした。先頭に立った吾輩は振り顧見ると、三番目に乗って来た未醒画伯、馬から真逆様に落ちて、大地へ四ツん這いになっておる。一歩外へ落とされたら、忽ち奈落の谷底である。今頃は死出の山路で峠越しでもやっておらなければならなかったが、幸いなるかな、身に寸毫の傷だも負わずして、危うき一命を取り止めた。馬で峠を越そうなぞと強がった天罰覿面、谷へ落ちなかったのが何よりのめっけもの。元気は再び旧に倍す。

峠を越して高平という処で馬を捨てた。茶屋へ入ったところが作り立ての饅頭がある。オーライオーライとばかり頬張ること数十個、これでようやく腹が治まった。が、治まらないのは馬子先生である。法外な賃金を強請って頑として動かぬ。欲張りの田舎者ほど面憎いものはない。将軍忽ち、

「馬鹿にするない。定めた賃金だけ持ってサッサと帰れ」

頭から浴びせ掛けられて、馬子さんブツブツいいながら帰ってしまった。

ここから沼田まで二里。平坦な道を一気に突破して午後の三時半というに沼田町へ着いた。