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ほんだな

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宮本 百合子

「書斎」1941(昭和16)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,015 字 · 8 页

青空文庫

そこはひろい池で、赤い夕陽がさしている。向うの黒い森も池の水の面も、そこに浮んでいる一つのボートも、気味わるく赤い斜光に照らされて凝っとしている中に、何かが立っている。青白いような顔半分がこっちに見えるのだけれど、そのほかのところは朦朧として、胸のところにかーっと燃え立つような色のもり上ったものがたぐまっている。五つの娘の瞳にそれはいくらかゴリラの立ち上ったみたいに映るのであった。その絵ばかりはどう見ても会得しかねた。一度ならずくり返えして見て、わからずしまいであった。今なおまざまざとのこっているその印象を目の前にくりのべてみると、それはまさしく日本のロマンティック時代の絵画の一葉であったことがわかる。燃える夕陽と迫る夕闇の池の上で、若い男の顔の半ばが、その胸によりすがっている若い女性の黒髪のかげにかくされていたというわけであったのだろうと思う。感傷と未熟さの朦朧体にくるまれて、その絵はおませな女の子の眼に、どうしてもわけの分らないゴリラに似た塊りとして映ったのは愛嬌がふかい。

女学校に通うようになってから、私はいつとなし玄関わきの七畳の部屋を自分の部屋にするようになった。