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すぎがき

杉垣

宮本 百合子

「中央公論」1939(昭和14)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,051 字 · 30 页

青空文庫

と云った。

「そんなんじゃない」

両手でジョッキのまわりをつつむようにしながらのり出した。

「君たちはどう思っているか知らないが、これからの北海特産物は、大した意味をもって来るんだぜ」

大陸の治安が恢復するにつれて、北海道から出る穀類、海草類がいくらでもそっちへ輸出されるようになって来るというのであった。

「現に大分動いている。将来はどの位の販路がひらけるか分らないくらいだ。来る汽車ん中で二三の人にその話をきかせたら、そりゃいいことを教えてくれたってよろこんでいたよ」

「特種を公開しちゃっていいのかい」

「ところが僕がほんとにやろうとしているのは海草じゃないんだ」

飯島はちょっと肩をすくめるようにして笑って、

「僕のやるのは貝柱の方だ」

ヨーロッパ大戦でもはじまればそれこそ大したものだが、そうでなくって中国へ出すだけでも北海道の貝柱は足りないくらいだ。

「支那人は皆あれを料理につかうんだからね。――どうだい、出資しないか」

「本当に、そんなにみんなが食うのかい?」

戸山が、にやつきながら飯島の顔を見た。

「俺は『大地』って映画をみたが、そんなものを食っちゃいなかったぜ」