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すぎがき

杉垣

宮本 百合子

「中央公論」1939(昭和14)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,051 字 · 30 页

青空文庫

と云った。その声に笑いがふくまれている。

「信用?……ああ。それは、だってあたり前だわ」

「ひとつ、君の兄さんのすすめにしたがって、その何とか総務係長というのになって見ようか……」

それには答えず、しばらく黙ったまま歩いていた峯子は、どこやら歎息のまじった調子で、

「兄さんはあなたが御贔屓なのねえ」

と云った。

「うちが女の子ばっかりだから無理もないようなものだけれど……。でもね、私お兄さんの御贔屓は、本当のところいつだって心配よ」

「――そういうところはなくもないね」

「お兄さんに、しんから私たちがわかっているとは云えないじゃないの。私たちに好奇心があるのよ。ちがうかしら。お兄さんなりに、何かパッとしたことをやらして見たい、そういう風なところがあるでしょう?」

「峯子たちのためにも生活の安定っていうか将来の安心というか、この頃はそういうことも考えてるんだろう」

「じゃ満州のその何とか製鋼なら、安心があるというわけなのかしら」

「バックの性質やひきの関係から、兄さんとしては当然そう見られるんだろう」

どれ、と再び照子を自分の方へ抱きとって、慎一はショールを子供の体にまき直しながら、