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すぎこ
杉子
宮本 百合子
「新女苑」1941(昭和16)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,552 字 · 19 页
今度の事件から、杉子は紀子のように自分に絶望した考えかたをひき出して来ていなかった。一層身にひきしめて、生きてゆく目標をもつということの大切さをさとった。学校がつまらないということでは皆始終云っていることだけれど、それならば次の日から行くのをやめるかと云えば、そんなはっきりしたところはなくて、やっぱり通っている。これから通うからには、そこで知ることの出来ることだけは、確に自分のものとして感ぜられるようにやって行こう。そして、戯曲の勉強を本気にやるのだ。本気にやるということは、つまり結婚すればあきらめるという、そういうこととしてではなく、結婚のこともそれに応じたこととして考えるという方向でやって行くのだ。こうやって暖く少し重くおとなしく母の肩にもたれかかっている自分の精神の裡に、音も立てず飛躍が行われていることを感じて、杉子は不思議な心持がした。こんなにぴったりくっついていて、こんなに心が親愛にみたされていて、それで母でない自分の一生というものは自分だけにしかないという事実は、何と不思議だろう。
丁度次の土曜日が伊田のグループの集りの日にあたった。