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むらのせいこうしゃ

村の成功者

佐々木 邦

「現代」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,883 字 · 84 页

青空文庫

のらくら息子

昼からお客さんが見えますからってね」

と頼んだ。

「伯母さん、お芽出度うございました」

と卓造君はお祝いを述べた。

「未だ何うなるか分りませんよ。あの伯父さんのことですもの」

と口先でこそ貶したが、伯母さんの顔はその朝と違って明るかった。

のらくら息子

卓造君の生れた山中村は水の名所である。字からして泉、小谷、水窪なぞと水に因んだところが多い。村中から水が湧く。それが田川で落ち合って可なり大きな川になる。田川さんの田川は姓でもあり、川の名でもあり、又字の名でもある。田川が隣村の百間川へ流れ込んで大滝になる。鮎も河童もこゝから上へは登れないという伝説になっている。凄じい勢だ。もうそのまゝで電気が出ているように水が青光る。

田川の伯父さんの頭には常にこの大滝があった。水力電気! 先代が左前にして残した家産の益※(二の字点、1-2-22)傾くにつれて、そればかり考える。尤も他に挽回の道はない。小作は我儘になるばかりだ。何彼と言って毎年のように年貢を値切る。約定通りに入れることは滅多にない。ひどく足りない年が続くと、田川さんは田地を手放す。それも村の人に知られたくないから遠方のを片付ける。