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むらのせいこうしゃ
村の成功者
佐々木 邦
「現代」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,883 字 · 84 页
田舎の金持は辛い。自分の所有物を処分するにも遠慮がある。その都度これでは困ると急き立てられた心持になって、東京から水力電気の専門家を招聘する。
「これは有望なところです」
と技師連中は折紙をつけてくれるが、単にそれ丈けの話だ。世間は相手にしない。
「又田川の旦那の道楽が始まったよ」
と言っている。去年の秋、田川さんは末の娘を縁づけると共に又々遠方の田地を手放す時期が来た。事があると何うしても食い込む。
丁度その頃、東京の尾崎さんが大滝の夢を見た。若い時鮎を釣りに行った記憶が残っていたのだった。彼処から上は鮎も河童も登れないという伝説まで思い出した。
「郷里には好い景色のところがあるよ」
と息子さん達に話した。それから妙に大滝が頭の中に残っていて企業の方と絡みついた。成功者は夢寐にも金儲けを忘れない。彼処を一つと思いつくと同時に、水源の山中村が胸に浮んだ。長男が紡績の方面に手を染めている。相談の結果、技師を呼んで、
「一遍見て来て貰おう。有望なら展墓に行く」
ということになった。
「待ち給えよ。彼処へ行って仕事をするには田川を抱き込まなければ駄目だ。田川の田川といって村一番だ。