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むらのせいこうしゃ
村の成功者
佐々木 邦
「現代」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,883 字 · 84 页
あの人は公益が病気ですからね。兄さんが使わなければ睦さんが使ってしまいます」
「誰が使っても人の金だ」
「私、兄さんと約束があるんです。これからお祝いながら行って参ります」
「もう日が暮れるよ」
「正次郎をつれて行きます」
「おれが行く。卓造が行く。その後からお前が正次郎をつれて押しかけて行く。嫂さんは何と思うだろう?」
「…………」
「兄さんは明日尾崎さんと一緒に東京へ立つんで忙しいんだ」
「卓造は未だいますのね」
「うむ、手伝っている。おれは尾崎さんを見送ると直ぐに逃げて来た。金儲けの自慢話は聞きたくない」
「変人ね」
と卓造君のお母さんは機嫌が悪かった。
翌日正午、○○町の駅は尾崎さんの一行の見送人で賑った。角町の有志は総出だった。自分の方の成功者だから鼻が高い。それが永久的繁栄策をお土産に残して行くのだから景気が好い。
「○○町の奴等、今に見ろ」
という肚がある。その昔鉄道を寄進について以来、角町は振わない。学校といわず工場といわず、すべて土地の潤いになるものは皆○○町に取られている。
田川の伯父さんも一行に加わって東京へ立つ。卓造君は睦さんと一緒に駅へ詰めかけていた。