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ひがしやまじだいにおけるいちしんしんのせいかつ
東山時代における一縉紳の生活
原 勝郎
「藝文」京都大学文学部、1917(大正6)年8月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,142 字 · 134 页
明応六年といえば彼の遯世に先だつこと二十年である。しかるに当時すでにかくのごとくであったとすれば彼の遯世の決して世間一様のものでないことが知らるべきで、阿弥陀の尊像はいうまでもなく、土佐光茂に命じて画かしめた法然上人、善恵上人の両肖像は、彼の旦暮祈念をこらした対象であった。されば絵師に註文するにあたっても、用意なかなか周到なもので、善恵上人の肖像には黄色の珠数を添えるようにとの注意をすら、ことさらに与えている。
予がかく浄土教と実隆との関係を縷説するのは、これが大いに実隆の文藻に影響を有するからなので、いたずらに言を費すのではない。その昔アッシシのフランシスの信仰が、トルヴァドールと密接なる関係を有したのみならず、この聖者の感化が、当時のイタリア美術に少なからぬ影響を与えたことは、史家の明かに認むるところだ。フランシスのキリスト教におけるは、ちょうど法然等の仏教におけるのと酷似している。しかしてわが国の浄土宗は、もし美術史家のいうごとくに日本美術に影響を与えたものとすれば、美術以外文学の方面にも、相当な影響のあって然るべきはずで、実隆の文学のごときはたしかにその実例を示すものであろう。