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いなかがえり

林芙美子随筆集

林 芙美子

林芙美子『林芙美子随筆集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:田舎がえり、落合町山川記、貸家探し、生活、文学的自叙伝、恋愛の微醺、朝御飯、着物雑考、新生の門、平凡な女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,157 字 · 118 页

青空文庫

夜になると宿屋の上をほととぎすが鳴いて通った。この町では晩春頃からほととぎすが鳴きに来た。学校の国文の教師や、女友達が遊びに来てくれた。子供を寝かしつけていて遅くなったと云う友達もあった。

*

翌日は早く起きて因の島行きの船へ乗った。風は寒かったがいい天気だった。船が町に添って進んでゆくので、わたしは甲板に出て町を見上げた。わたしの住んでいた二階が見える。円福寺と云う家具屋の看板が出ていた。わたしは亡くなった義父の棺桶を見ているような気持ちだった。千光寺山には紅白の鯨幕がちらほら見えた。因の島の三ツ庄へ行くのを西行きとまちがえてたくまと云う土地へ上った。船着場の酒屋で、歩いてどの位でしょうと訊くと、一里はあるだろうと云う返事なので、荷物が大変だと、船をしたてて貰って三ツ庄へ行った。小さい和舟の胴中に、モオタアをつけた木の葉のような船で、走り出すと、頬がぶるぶるゆすぶれる。はぶの造船所の前を船が通っている。社宅が海へ向って並んでいる。初めて嫁入りをして行った家が見える。もう、あの男には子供が沢山出来ているのだろうと、ひらひらした赤いものを眼にとめて、わたしはそんなことを考えていた。