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いなかがえり
林芙美子随筆集
林 芙美子
林芙美子『林芙美子随筆集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:田舎がえり、落合町山川記、貸家探し、生活、文学的自叙伝、恋愛の微醺、朝御飯、着物雑考、新生の門、平凡な女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,157 字 · 118 页
精神的なものがあふれて来るほど、恋愛は悲劇的でものがなしくなって来る。恋愛の微醺とはどこの国へ行ったらあるのだろうか……。
どこの国でも、恋愛物語で埋れているようでいて、恋愛の微醺を説いた物語は皆無だ。恋愛は生れながらにして悲劇なのだろう。悲劇でもよいから、せめて浪漫的な恋をとおもうが、すでに、世の中はせち辛くなっていてお互いの経済の事がまず胸に来る。
夫婦同士は貧しくてもいいけれど、恋愛は貧しくては厭だ。しみったれて、けちけちした恋愛はまっぴらごめんだ。せめて恋愛の上だけでも経済を離れた世界を持ちたい。私はひとの奥さんだから、弱みそで困る。吸へどもかなし、ばらの花びら、こんな気持ちは心の上だけの遊びで、これも煙りのような懐情の一つ。
未婚の者同士の恋愛は、どんな楽隊がはいってもいいからはなばなしくやってもらいたいものだ。巴里の街のアベックのように、未婚の者の美しい恋愛は、遠くからみていても、けっして厭なものじゃない。大いに微醺を享楽して貰いたいものだ。どんなに貧しい恋人同士でも、恋のさなかにあれば王侯の如しである。新らしい恋愛には経済も必要かも知れないけれど、ささやかながら、秩序正しく清純であってほしい。