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こたんのふうかくをはいす
枯淡の風格を排す
「作品 第六巻第五号」1935(昭和10)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,411 字 · 15 页
とやると、直ぐ美代子の朗らかな声が手に取るやうに聞えてきた。
「……都合がついたら遣つてこないか」
「えゝ行くわ」
時間の打合せなどしてから、電話を切つた。
まことに淡々たるもので、作品の全ての部分が斯ういう調子で書かれているのである。
元来会話というものは、語られた言葉の内容が心の内容の全部ではなく、語らざる心もあり、言葉の裏側の心もあり、更に二重に三重に入り組んだ複雑が隠されていることは言うまでもない。それゆえ語られた言葉ばかりの戯曲では、いきおい日常そのままの冗漫な会話ではいけないわけで、心の裏を推測するに便利のような組み立てをもって立体的な会話を構成する。然し徳田氏の「旅日記」の場合は、会話が決して斯様な立体的な組み立てをもって構成されてはおらぬ。単に日常ありのままの平面的なものを、わざと裏の分らぬように取りだし、恰も小学生の綴り方に近づこうとする故意の単純さを衒って読者の前に投げだす。しかも会話の裏については、全く説明をつけ加えようとせぬ。
果して会話の裏側に何ものもないのだろうか? 然り、書かれた以上に強いて説明し反省すべきものはない、と徳田氏は言われるかも知れぬが、然らば問題は自ら別だ。