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そめきちのしゅぼん

染吉の朱盆

国枝 史郎

「サンデー毎日」1927(昭和2)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,824 字 · 35 页

青空文庫

眼の眩むようないい所へな!」

濁った不快な声である。

岡八返事をしなかった。出で入る気息をじっと調べ、飛び込んで来るのを待っていた。

「来るな」と思った一刹那、果して一人飛びかかって来た。ガンと一つ! 狂いはない! 手練の十手だ、眉間を撲った。

「むっ」といううめき! 倒れる音! 後はシーンと静かである。

岡八ソロリと位置を変えた。

「鳥渡手強い」とつぶやく声、闇の中から聞えて来た。例の濁った不快の声だ。

と又一人飛び込んで来た。

全く同じ手、ガンと一つ! 岡八、相手の眉間を撲った。

「むっ」といううめき! これも同じだ、ぶっ倒れる音! これも同じだ。「二匹どうやら片づけたらしい」岡八心で呟いた。「幾匹でも来い、退治てやる」

そこでソロリと位置を変えた。

しばらくの間は静かである。

ボソボソと話す声がした。

「何か相談をしているな、一体幾匹いるんだろう?」

じいいッと闇をすかして見た。まだ三、四人はいるらしい。

矢張り感覚、こいつでわかる、その三四人が左右から、どうやら一度にかかるらしい。背後は大藪逃げることは出来ない。いかな岡八でも一人に三、四人、これでは勝目はなさそうであった。