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じゅうどうとけんとうのころがりじあい

柔道と拳闘の転がり試合

富田 常雄

「少年倶楽部」講談社、1935(昭和10)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,666 字 · 8 页

青空文庫

顔をしかめて富田六段をみつめたまま、びっこをひいている。

すると富田六段は、ひょいとからだを起こしてしゃがんだ。しゃがんで、両手を組んで目を閉じた。道ばたでいねむりでもしているようなかっこうだ。モンクスは気味が悪い。立っているなら突進できるが、しゃがまれたのでは、どうしても、腰をかがめなければ打てない。

もともと西洋人は足が弱い。モンクスがしゃがんだ自分を打つのには、足を大きく踏み出して打ってかからなければ、打撃に力がはいらない。足だけひいて、へっぴり腰で打つのなら、恐ろしくない。富田六段の作戦はそこにあった。

口笛、やじ、ののしり声、モンクスがすっかりおびえているので、アメリカ人が承知しないのだ。場内はたいへんな騒ぎだ。

モンクスはいよいよ、覚悟をきめたらしい。足踏みしながらすきをうかがっていたが、相手がいつまでも動かないので、思いきってだッと飛び込み、富田六段の頬へものすごい横打!

その一瞬だ。富田六段の右の手が、さっとひらめくように動いたと見ると、モンクスの踏み出した足首をさっとすくい上げた。

丸太ん棒を立てて、そのいちばん下を力いっぱい払ったのと変わらない。