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じゅうどうとけんとうのころがりじあい

柔道と拳闘の転がり試合

富田 常雄

「少年倶楽部」講談社、1935(昭和10)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,666 字 · 8 页

青空文庫

どうして戦うか

「どうしてもやらんか。」

「やらん。」

モンクスが申しこんでくるごとに、富田六段ははっきりとことわった。

「柔道は見世物ではない。見物人の前で拳闘と試合をするのはごめんだ。」

「ふん、拳闘と試合のできないような柔道、そんなものは、手先の芸当なんだな。」

「なに!」

この一言に富田六段はくちびるを噛んで、四回めの申しこみにきたモンクスをにらみすえた。

「よろしい、試合をしよう。」

「やるか。ではお互いが打ち倒されて眠ってしまうまでやろう。」

「よろしい。」

どうして戦うか

富田六段は一日じゅう、部屋にとじこもって考えた。

拳闘と柔道では、そのやり方がまるで違う。拳闘はなぐるいっぽうである。柔道は投げる、おさえこむ、絞める、逆をとるという技だ。どうして試合をしたらいいか。第一、どうあっても負けられない。日本の恥になる。柔道の力というものをばかにされる。だが、正面と正面に向き合って、拳闘選手のものすごい打撃を受け留めることは絶対にできない。顎打、直突、横打、どの一撃だとて、それがまともにはいったらいっぺんに打倒されるのはきまっている。あの電光のように早い打撃。向こうは打っては飛びのき、飛びのいてはまた打ちかかってくる。