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りゅうえいひろくかつえぐら

柳営秘録かつえ蔵

国枝 史郎

「国民新聞」1926(大正15)年1月5日~15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,933 字 · 27 页

青空文庫

地に突いたは自然木の杖、その上へ両手を重ねて載せ、その甲の上へ頤をもたせ、及び腰をした様子には、一種の気高さと鬼気とがあった。

「小僧」と老人は教えるように云った。

「手品などとは勿体無い。それは『形学』というべきものだ。どこで学んだか知らないが、ある程度までは達している。しかしまだまだ至境には遠い。それに大道で商うとは、若いとはいえ不埒千万、しかし食うための商売とあれば、強いて咎めるにもあたるまい。……とまれお前には見所がある。志があったら訪ねて来い。少し手を執って教えてやろう」

老人はスッと背を延ばした。

「重巌に我卜居す、鳥道人跡を絶つ、庭際何の得る所ぞ、白雲幽石を抱く……俺の住居は雲州の庭だ」

老人は飄然と立ち去った。つづいてバラバラと見物が散り、間もなく暮色が逼って来た。

腕を組んだ鬼小僧、考え込まざるを得なかった。

「驚いたなあ」と嘆息した。

「ズバリと見抜いて了やアがった。全体どういう爺だろう? 謎のような事を云やアがった。俺の住居は雲州の庭だ。からきしこれじゃア見当がつかねえ。雲州の庭? 雲州の庭? どうも見当がつかねえなあ。……」

「どうしたのだよ、え、鬼公! 変に茫然しているじゃアないか」