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かき

柿

山本 周五郎

「現代」1939(昭和14)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,565 字 · 25 页

青空文庫

小房は涙を抑えきれなかった。

「牧野は親思いだからな、急病だったのだろうが、看病もせずに死なれてはさぞ心残りなことだろう……思い遣られる」

「お悼みの手紙を差上げましたら」

「うん書こう、おまえも書け」

兄妹は心を籠めた哀悼の詞を送った。

その返辞はなかった。

与吉右衛門の後任は月を越すまで定らなかった、そして一応、城代加役の原六郎右衛門が当分のあいだ代理を勤めることに決定して、ようやく辰之助は鶴岡へ帰って来た。

帰るとすぐ葬儀が行なわれた。

主君からも弔使が立ったほどの盛儀で、半月ほどはゆっくり話をする機会もなかったが、やがて三七日の忌も明け出仕も元の通りになったのに、どうしてか辰之助は走川家へ訪ねて来る様子がなかった。

小房は折々心配そうに、

「牧野さまはどうなすったのでしょう、まだお取込みなのでしょうか、……お帰りになってからまだ一度もお見えになりませんのね」

「なにそのうちやって来るだろう」

兵馬は努めて何気なさそうに云った。

「城中では会っているが、元気でやっている、近いうちに馳走のし直しをして招くとしよう」

「それが宜しゅうございますわ、もう雁が出はじめましたから、お好きな串焼をどっさり御馳走致しましょう」